歯科矯正で歯が動く仕組みを徹底解説
矯正治療で歯が動く仕組みとは?
歯科矯正治療では、ワイヤーやマウスピースを使って歯を動かしますが、実際にどのような仕組みで歯が移動するのかご存知でしょうか?今回は、矯正治療における歯の移動メカニズムを解説します。
歯が動くのは骨のリモデリングがカギ
矯正装置から加わる力が歯に伝わると、歯を支えている「歯根膜」と「歯槽骨(歯を支える骨)」に変化が起こります。
- 引っ張られる側(牽引側) → 骨が作られる
- 押される側(圧迫側) → 骨が吸収される
この「骨の作り替え(リモデリング)」によって、歯が少しずつ動いていくのです。

骨の変化を起こす細胞の働き
骨のリモデリングには、2つの細胞が関わっています。
- 破骨細胞(はこつさいぼう):骨を溶かす
- 骨芽細胞(こつがさいぼう):骨を作る
矯正力によって、骨の吸収と形成がバランスよく行われ、歯がスムーズに移動するようになります。
矯正治療が進むときの体の反応
矯正装置の力が加わると、体の中ではさまざまな化学物質(サイトカインや成長因子など)が分泌されます。これらが細胞に指令を出し、骨のリモデリングを活性化します。
また、矯正力によって歯の周りの血流が変化し、低酸素状態になることがあります。これがさらに骨吸収を促進し、歯が動く仕組みを加速させます。
歯の動きを速くする方法
矯正治療を短期間で終わらせるために、近年さまざまな方法が研究されています。主な方法は以下の3つです。
1. 外科的手法
歯を動きやすくするために、歯槽骨に小さな穴を開ける手術(コルチコトミーなど)を行います。これにより、骨のリモデリングが促進され、歯の移動が速くなります。
2. 薬を使う方法
成長ホルモンやビタミンDなど、骨の代謝を活性化する薬を活用することで、矯正治療のスピードを上げることが期待されています。ただし、臨床試験の数が少なく、まだ一般的には使用されていません。
3. 物理的な刺激を加える方法
電磁波や振動、光(レーザー)を利用して歯の移動を促進する方法もあります。特に、振動装置(AcceleDentなど)を使用することで、矯正期間を短縮できる可能性があると報告されています。

まとめ
矯正治療で歯が動くのは、歯を支える骨が「溶けて→作られる」というリモデリングの働きによるものです。さらに、最新の研究では、矯正期間を短縮するためのさまざまな方法が開発されており、これからの矯正治療がより快適でスピーディーになる可能性があります。
「矯正治療って時間がかかる…」と不安な方も、こうした技術の進歩を知ると、少し気が楽になるのではないでしょうか?
当院ではゴムメタルワイヤーによる矯正を行なっております。ぜひご覧ください。
参考文献
- クインテッセンス出版『加速矯正による治療期間短縮のコンセプト』
- スピード矯正研究会 深沢真一 先生 監修